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優しい時間「五」

みんなで活け花

 施設を訪ねると、すでにバケツに一杯の花が用意されていました。すべて施設の 庭に咲いている花です。園芸ボランティアの人たちによって育てられており、ここは広大な自然の山間に佇む幸せな環境なのです。


 前回のみずき棟に続き、今回はもみじ棟の入居者たちとひとときを過ごす日。事務所の奥に続くリビングには二人向い合せに座る大きなテーブルが四つ並んでいて、笑顔の入居者が待機しておりました。
ボランティアの先生のお話し「自然の花を生けるということは、自然の花に心を通わせて、そこに新しい美の創造の世界を作り出すことで、脳の活性化に最適です」と花と脳の関係」を頷きながらに聞いてくださり、さあ花と心を通わせて右脳に刺激を与えましょうを合図に早速オアシスの入ったコンポートに二人一組のお年寄りが思い思いに活け始めました。

 
 一人のお年寄りが一輪の花を掲げて、これは「アスチルベ」という花だと説明しています。あまり聞かない花の名を覚えているその自信ある人柄に感心すると、その昔家庭で育てていた花にまつわる生活が次々と蘇ってきました。

 
 オアシスになかなか挿すことができない細い茎に四苦八苦している人。
元歯科医の経歴を持つ男性は初体験の生け花を無心に活けている姿はステキなおじいちゃんを醸し出していました。
104歳のモダンなお年寄りはオアシスに一本一本挿しながら、「おしゃれと同じだわ」「あら、きれいに挿さったわ!」足元に挿したカマクラヒバに「あら、豪華版ね」、花と対話する様子は心から楽しんでいるようでした。
「脳の働きが良くなって利口になったわね」
このグループはユーモラスな会話が飛び交い、離れたテーブルの向こうからも楽しいヤジが飛びます。


 みんながほぼ完成に近づいたころ、お風呂上がりのお年寄りがリビングに姿を見せました。もうひとりの入居者です。9名全員がそろいました。スタッフが庭から彼のために花を摘んできました。
一人用の花器を手元に置くと、活け方を忘れてしまった様子。その昔、職場のサークルの趣味の会で生け花の指導をしていたキャリアの持ち主です。その大先輩がにこやかな戸惑いの笑みを時空の歳月に置き換えた存在感でただ花を見つめています。
「大丈夫よ!」
遠くのテーブルから再び声がかかります。スタッフが一本ずつ手渡すと、やがて小さな花器にも花が咲きました。


「みんな若返ってよかったね」
「バランスがとれているよ」
「色彩的に素敵だね」


先生のアドバイスが不要なくらいに、強調心が生まれました。
花材と花器、花と枝などの使い方など考えることは右脳と左脳のバランスの上に成り立つ人間に、大切な強調心を養う実証となりました。


そして最後に、各自が活けた花をかかえて、
「花束だいてるあなた あなたが咲かせた花みたい 
おめでとう おめでとう おめでとう」
「花束だいてるあなた あなたの笑顔も花みたい
おめでとう おめでとう おめでとう」


美しい花、美しい笑顔、美しい心、美しい強調心…
みんなの心が一つになって大合唱になりました。
花たちは、優しい温かいエネルギーを出してお年寄りの心に融合してくれました。


 この日活けた花は
アスチルベ、紫陽花、矢車草、レッドロビン、ヒオウギ、ラベンダー、ギボシ、ノコギリソウ、バラ、ホタルブクロ、松葉ぼたん、インパチェンス、マリーゴールド、紫つゆ草、カマクラヒバたちでした。




              2012年6月24日(日)
JUGEMテーマ:日記・一般


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