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優しい時間「六」

みんなで活け花

「皆で活け花」を創めて3回目。
今回は体調のあまり芳しくないお年寄りが入居する棟へ訪ねることになりました。そのことを心に刻んでお年寄りが待つリビングを訪ねるとそれぞれが午後のひとときを寛いでおられました。テーブルに新聞紙を敷き、オアシスを入れたコンポートを用意すると何が始まるのだろうとお年寄りたちの怪訝な様子を隠せません。二人一組で4組が二つのテーブルを囲みました。それぞれのテーブルには今日もたくさんの花たちが並んでいます。


「初めまして」ボランティアの先生が挨拶をしました。
そうです。お花の先生は入居者の人と顔を合わせるのは全く初めてなのです。先生も緊張しています。でもこのグループホームへはたくさんのボランティアの人たちが訪ねては楽しいイベントを行っているので、今日は何が始まるのだろうと興味を持って受け入れてくれるのです。


「今日は皆さんと一緒に生け花を楽しもうと思ってまいりました。自然の花に心を通わせて、心を豊かにしていきましょう。この花たちは全て万寿の森で咲いている花です」
待ちきれないお年寄りが直ぐにコンポートに挿しています。それでも好いのです。止めたりしてはいけません。
「さあ自由にどんどん活けてください」
皆思い思いに活け始めました。


 ある一組は生け花の経験があるようです。「真・副(添)・体(控)」という、生け花を構成する3本の役枝を思い出したようです。どうやら今活けているのは池坊の自由花のようです。
一人の男性のお年寄りがスタッフと一緒に静かに活けています。少々気難しいと聞かされておりましたが、穏やかな無言の顔で活けています。彼のコンポートの中でヒマワリが太陽のように輝いていました。
一方、もう一つのテーブルでは苦戦していました。自由に活けるのが苦手の様子。隣の人は一輪の花を掲げて「はい」と隣の人に渡します。渡された人はどこに挿してよいか分かりません。
もう一組は楽しそうに活けていますが、手先に力が入らず、鋏を握れません。


 皆が苦戦している時、施設長がカマクラヒバをたくさん抱えて応援に来てくださいました。小さく切ってオアシスの横に添えると一段と豪華になりました。
花の力は不思議です。みんなの胸の中にあるモヤモヤが少しずつ晴れてくるのです。力みが解けてゆくのが分かります。いつの間にかコンポートに花の森ができました。するとみんなの顔も穏やかになっているのです。


「いい思い出になりました」
「トレビアン!」フランス語の感動詞が出てきました。最初「どこに挿すの」とぶつぶつ言っていた人です。
「楽しかった」
「豪華に活けられた」
「花はやっぱりいいねぇ」
「池坊をやっていたが、戦争が近づいて兵士を送り出すことばかりでそれどころではなくなった。花も世の中から消えてしまった。そして活ける時間もない。そんな時代だった。」
耳の遠い彼女はしっかりと自分の青春時代を語っていました。
この日偶然にも池坊経験者二人が一組となって自由花を楽しまれたのです。
その写真を拝見すると込みあげてくる感動の涙を抑えることができない。
「みなさん素晴らしい。皆さんの心がこのように表れました。」
先生のアドバイスがうれしくみんなの心の中へ溶け込んでゆきました
いけばなの美しさにリズムがあるように、人間の身体にもバイオリズムがあります。そのリズムが人間に安心感を与え、幸せをもたらしたと言えるでしょう。



そして最後に、他の棟と同様に「おめでとう」の歌を歌いました。一人一人に自分が活けた花をかかえていただき、
「花束だいてるあなた あなたが咲かせた花みたい 
おめでとう おめでとう おめでとう」
「花束だいてるあなた あなたの笑顔も花みたい
おめでとう おめでとう おめでとう」


 不思議です。始める前と後と、このエネルギーの違いは…。
気難しいと言われているおじい様も穏やかに参加してくださいました。その穏やかな雰囲気から伝わってくる深い時空の心のようなものを感じました。
皆一緒にラララララララ -------
みんなの心が一つになって大合唱です。


この日は他の童謡も合唱し、私たちも3時のおやつをご相伴にあずかりました。


花たちは、優しい温かいエネルギーを出してお年寄りの心に融合してくれました。


この日活けた花は
ヒマワリ、百日草、ヒオウギ、レッドロビン、カマクラヒバ、ギボウシ、紫陽花、アオキ、ムシトリナデシコ、ペチニア、コリウス、アスター(エゾギク)ムラサキサルビアたちでした。



              2012年7月16日(月)さくら棟にて
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